映画に愛をこめて アメリカの夜 特別版 /★★★★★

"映画狂"に愛を込めて。宝物になりました。
映画に愛をこめて アメリカの夜 特別版 [DVD]
「パメラを紹介します」という架空の映画の撮影を通じて、映画人達の情熱を描く。
映画好きなら必ず一度は通るというくらい有名な映画です。
以前から名前は知っていたのですが、ワーナーから廉価版が出たので早速購入しました。


普段は英語の映画ばかり見ているせいか、最初はフランス語のニュアンスがわからず困りました。
特に主演男優とスクリプタの会話は愛を語っているか、罵っているのかさっぱり分かりません。
ただ物語が進むにつれ、その違和感はなくなっていきす。


劇中劇となる映画のシーン。それを撮影してるクルー。重ねられるテイクの都度変わる視点。本番カメラはフィックスでクルーの姿は手持ち撮影。クレーン撮影をしている姿をさらにクレーンで撮っています。
そのどれもが、実に高度な撮影をされていることが分かります。
見ていて鳥肌が立ちました。
さらに、さまざまな人物の群像劇。出てくる人のだれもが不安定でスリリング。臨場感に溢れています。
いつの間にか私も一緒になって映画を作っていました。


猫演技のシーンでは一緒になって応援し、スタントシーンではハラハラ。
後半は台所撮影シーンのモンタージュから始まって、さまざまな難問が発生し、一時期は完成すら危ぶまれますが、ファーストシーンが姿を変え、この映画がクランクアップします。


ジュルジュ・ドリューの音楽がこの人々の情熱を高らかに謳いあげます。
(そうまるで彼らの栄誉を称えるように)


映画好きが昂じて批評家から映画監督になった(つまり外から映画界に入ってきた)トリフォーらしい映画だと思います。


このDVDは私とって宝物になりました。

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参考
■映画に愛をこめて アメリカの夜
思い入れのある解説があります。
また本作の美しさはDVDでは表現できておらず、BShiでようやく近づいてきたとの事。こうゆうのを読むとすごく羨ましくなります。

■映画『アメリカの夜??映画に愛をこめて??』(1973年作品)監督・主演:フランソワ・トリュフォー  監督自らの主演で描く、映画を愛してやまない人々の物語。- 楽天ブログ(Blog)
こちらも素晴らしい解説がありました。

■『アメリカの夜――映画に愛をこめて』前説??トリュフォーについて私が知っている二、三のことがら
トリフォーについて語られています。情熱を感じます。

■CINE ART 3 フランソワ・トリュフォーの柔らかい話
トリフォー作品が解説されています。愛を感じます。

■入間洋のホームページ(1950-70年代の米英映画と女優に再フォーカスするページ)
50年代〜70年代に活躍した女優名鑑。
その量も凄いですが、見たことある映画がほとんどない事実に愕然とします。


なお、本編で出てきた様々なエピソードやDVD特典は以下の通りです。
監督は様々な人々の質問に答えなければなりません。

  • ローソクで明かりを工夫しました」いいね。線はどこを通すんだ?
  • 「別荘の設計ができました。中には家具も入れます」外観しか撮らないからベッドだけでいいよ。
  • 「監督、どの拳銃がいいですか?」彼は手が小さいからこれかな
  • 「カツラができました。色はもっと薄いほうがいいですか?」担当と相談してくれ。
  • アメリカから要望が来た。撮影は7週間だけだ」35日では撮れない。むりだ。
  • 「なんでドアと食器棚が同じなの!!」ああっ、君ならできる。休憩しよう。
  • 「母が亡くなったので3日ほど休みをください」いいよ。「でも穴をあけたくないんです」では、代わりを探してくれ。
  • 盗んだポスターは「市民ケーン

本作の監督はトリフォー自ら演じています。さらに登場人物の中では比較的まともな人物として描かれていますが、実は一番映画に狂っていることが、後半のエピソードで分かります。
オープニングとエンディングの対比は実に見事ですね。
アメリカから呼んだという設定のジャクリーン・ビセットは、そのまま。ただし本人いわく当時はそれほどスターではなかったとの事。
その美しさには息を呑みます。

◆ ◆ ◆

映像特典(約72分)
1.ジャクリーン・ビセットによる映画に愛をこめて アメリカの夜(9分)

  • 出演のオファーを彼女のエージェントが無視したため怒ったこと。
  • トリフォー作品は"子供"と"女性"が描かれることが多く、女優としてはやりがいがあったこと
  • 低予算だったため、衣装を持ち込んでくれと頼まれたが、まだ駆け出しだったので、スターらしい衣装がなく、あわててブティックに駆け込んで大枚はたいて3着用意したこと。
  • トリフォーの演出は細かく、戸惑うことも多かったが、作品を見て納得したこと。
  • 一番好きなシーンは手の演技を付ける所。あれはまさにトリフォーそのものだと言っていた。
  • 同時期に近くで撮影されていたのが「シーラ号の謎」。ハリウッド大作でジェームス・コバーンラクエル・ウェルチを羨ましがっていたら、実は向こうもトリフォー作品という事で羨んでいたたらしいと語られます。

2.アメリカの夜について(約17分)
映画科の大学教授が本作についての解説を行います。

  • 「大人は判ってくれない」以降、トリフォーはスランプに落ちており、60年代後半はヒットに恵まれなかったが、本作で息を吹き返した。
  • 本作は「ヒッチコック・トリフォーの映画術」で語ったヒッチコックのアイデアが元になっているのではないか?
  • 「女は魔物か?」と本編で問い続けるが、トリフォーの答えはビセットのセリフ「男も女も生きている」にあるのではないか?
  • 監督は耳が悪くて、補聴器をつけていている設定は。ビスコンティブニュエルに対するオマージュでは?ただし、トリフォー自身も補聴器はつけなかったが難聴で苦しんでいたそうである。


3.トリュフォーイン・アメリカ (9分)
先ほどの教授やデ・パルマ監督などが「未知との遭遇」に出演したときのトリフォーの様子を語ります。
トリフォーはなぜか自分の死を予感しており、特に後期は人生計画に従って映画を作っていた気配があると言っていました。
また「未知との遭遇」で本格的に俳優をやったことによって「アメリカの夜」では描き足りなかったことを気にしていたとか。
あれだけの完成度を誇っていても、生み出した人からすると不十分だったようです。
また、トリフォーはアメリカでの評判を気にしていて、実際ハリウッドとかなりの人脈もあったとの事。


4.インタビュー:キャストたち(24分)
ナタリー・バイをはじめとして、キャスト達のインタビュー映像です。
多くの出演者は"演出をしている時は監督を信じること"と言っています。
監督の思っている事が往々にして言葉では通じず、説明を端折ることが多かったそうです。
完成した映像を見て、やっと理解するとか。
ジャクリーン・ビセットも同じ事を言っていました。


5.メイキング(9分)
撮影時の貴重なメイキング映像です。
それまでカメラの横で演出しているトリフォーが自ら車に乗ってフレームインする姿にはビックリしました。
監督兼出演というのは大変ですね。
劇中の監督よりは情熱的で多弁な感じがしました。


6.トリュフォー インタビュー:カンヌ国際映画祭にて(2分)
カンヌ国際映画祭での監督のインタビュー。
まだ世間的な評価が出る前なので、かなり不安そうな様子です。


7.トリュフォー インタビュー:全米映画協会家協会賞にて(2分)
賞を貰って、批評家から大絶賛を受けた後なので、なかり余裕があります。
ホントうれしいそうですね。


8.オリジナル劇場予告編
ただの予告ですが、英語吹替えなので、全然口と合っていません。
吹替えの酷さを見るコンテンツです。

なお、本DVDは現在キャンペーン中。
これだけ入って980円。ネットショップだと800円ぐらいで買えます。
かなりお得だと思います。