イノセンス/★★

豪華になったのは技術だけ?時間は短いのに長く感じます
イノセンス スタンダード版 [DVD]
前作から9年経って予算も大幅アップの第2弾。時間も99分と短いので相当各シーンに力が入った力作かと思いきや、前作と同じような音楽で始まるのにどこかツボをはずした旋律に不安がよぎります。
CGは格段の進歩で前作のメイキングで「CGの可能性にもっと挑戦したい」と言っていた監督の思い通り、オープニングから実写と見まごうばかりの光景が広がります。

だが、しかーし、but、ちょっと待って。私が観たかったのはこんなんじゃない。そもそも素子というメインキャスターが不在なだけでもマイナスなのにそれに変わる強烈なキャラクターがないじゃないか。
バトーとトグサの地獄めぐりというスタイルはいいとしても、その他の登場人物がどうにも弱い。しかも終盤であるトリックが使われているのだが、どうにもくど過ぎて。
押井作品の特徴として「街(風景)」の描写が長く、それが作品全体のリズムを生み出し、主題へと昇華するカタルシスがあるのですが、本作では風景描写に力が入りすぎて、肝心の主題へのカタルシスに結びついていない感じを受けました。

結局、2004年は「アニメ豊作の年」として「スチーム・ボーイ」「イノセンス」「ハウルの動く城」と立て続けに公開されたのですが、どれも期待はずれに終わりました。1つの時代が過ぎたのかもしれません。
ただ、押井監督にはかつての輝きを取り戻して欲しいと切に祈るばかりです。

なお、DVDには本編の前に「ベーシックガイド」として15分程度の世界観を説明する映像がついてましたが、なんと、前作だけでなく本編の映像まで使っているので、これでかなり興味が半減してしまいました。ひどいなぁ。