大統領の陰謀/★★★★

緊迫感が素晴らしいが事件の全貌がわかりづらいのが難。
大統領の陰謀 [DVD]
ロバート・レッドフォードダスティン・ホフマン主演でウォーターゲート事件の真相を追う記者たちの姿を描く。
まず、序盤のボブ(ロバート・レッドフォード)の電話取材のシーンからぐいぐい引き込まれる。何のことはない電話をかけているだけだが新進気鋭(入社9ヶ月!)の記者という雰囲気と取材者と言葉で駆け引きしている様子が実にうまい。またそのボブの原稿を書き直す先輩のカール(ダスティン・ホフマン)とのやり取りも見事。映画はこの二人がさまざまな人たちに取材を行う様子が丹念に描かれる。監督はアラン・J・パクラ。「コールガール」で高い評価を受け、「パララックス・ビュー」に続く政治物として落ち着いた演出がドキュメンタリーとしての緊迫感を出している。また地道な調査を続ける二人の姿を俯瞰に引く構図(図書館やワシントン上空)や手前にTV画面を写しながら二人を見せる左右の構図が印象深い。

またこの当時の風俗も興味深く、電話はダイヤル式でカールはオフィスだろうとエレベーターの中(!)だろうとところかまわずタバコを吸う。またタイプライターがよくに出てくるが、一種の音響効果の役割を果たしている。この二人に姿にシビレた観客は多いだろう。("ワシントンポスト"のオフィスの雰囲気もいい)

脇を固める役者たちも凄い。大新聞社の"デスク"そのもののジェイソン・ロバーズ(「ジュリア」「バックマン家の人々」)を筆頭に二人を指導する古株のジャック・ウォーデン(「天国から来たチャンピオン」)ディープ・スロートと呼ばれる内部密通者のハル・ホルブルック(「ダーティハリー2」「カプリコン・1」)と70年代の名優がずらり。なお、J・ロバーズはこれでアカデミー助演男優賞を受賞している

ただし、1つだけ大きな不満が残った。それは最後が唐突に終わる印象を受けるのと、見ていて事件そのものがよくわからないというものである。
これはニクソンにそこまで迫りきれなかったことを意味しており、私の大好きな「JFK」のように結論まで断定するぐらいに吹っ切れば間違いなく傑作となったかもしれない。ただしこれは当時の世相が許せばの話だが。