マレーナ/★★★★

この話(寓話)の意味するものは?
マレーナ [DVD]
村一番の美人で未亡人となったマレーナの転落していく人生を常に見守り続けるレナート少年の視点から描く。
最初はイタリア映画にありがちな「手ほどきもの」かと思ったが、現実と空想(妄想含む)があまりにもシームレスに描かれているので、これは1つの寓話として描いているのではないかと気がついた。そう考えるとあれだけそばにいながらマレーナが少年に気が付かないのも、街の人たちがマレーナの噂しかしないのも、マレーナにあまり人間味が感じられないにのも理解できる。「マレーナ」とは少年から青年への成長する通過儀礼の象徴として存在しているのだ。

ただし、2箇所ほど寓話から逸脱したシーンがある。1つは街の人たちがマレーナを追い出すところ。もう1つはマレーナが戻って街の人たちからの挨拶を受け入れることろである。前者は寓話にしては悲惨すぎ、さらにモニカ・ベルッチの熱演も加わってここだけ妙に生々しい(ただしこのシーンがあるためにこの作品が忘れられないほど強烈な印象を残していることもたしか)後者は前者の場面が悲惨すぎたためかえって違和感を感じた。ただしこれがきっかけでレナートはマレーナを見守り続けるのをやめる決心が付くので、やはり前者の場面が悲惨すぎるのだろう。

モニカ・ベルッチは綺麗だがこの作品の中ではとことん落ちていく女を演じているので凄みの方を感じる(この作品の中では一度も笑わないのだ!)監督はジュゼッペ・トルナトーレ(「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」)でこの作品以降5年以上発表していない。

DVDのディレクターズ・エディションではスタッフ&キャスト解説のあるようなので、それぞれのシーンに関してのコメンタリを聞いてみたいと思った。