プリシラ/★★★★★

ドラッグクイーン3人のロードムービー。記憶に残る作品だった
プリシラ [DVD]
オープニングの「愛はかげろうのように」でいきなり、見事なゲイの芸と芸術的なほどのなりきりそして80年代世代を直撃するような選曲にしびれた。
奇抜な衣装を着て曲にあわせて口パクで踊るゲイをドラッグクイーンと言うらしいが、この映画はドラッグクイーンの見事な芸を要所要所に入れながら、シドニーからバスで地方のホテルに公演に行くまでのさまざまな出来事を描いている。
なぜゲイになったのかを説明する回想シーンもあるが、それは説明程度であくまで力点は現在の彼(彼女)の別性に生まれてしまった悲しみにおかれている。しかしオーストラリアの砂漠の中のせいか、決して湿っぽくならず色、色、色の色彩と80年代音楽の洪水、そしてコミカルな演出に幸福な気分にさせられるが、見終わった後にとても記憶に残るような作品に仕上がっている。

3人の役者(ヒューゴ・ウィーヴィングマトリックスガイ・ピアースメメントテレンス・スタンプ「コレクター」)のなりきりがすごく、かつそれぞれに深みを感じさせる。監督はステファン・エリオット(「氷の接吻」)。ドラマよりビジュアルのすごさが際立つ。

ちなみに曲は知っていたがこの映画の字幕で始めて歌詞の意味を知った曲があり、その意味でも忘れられない作品になった。

PS.劇中に出てくるピンポン女(日本人のつもり?)は「どんなに磨き上げた私たちの芸でもピンポン玉にはかなわない」といわせるだけの存在にしてはあまりに強烈過ぎて深読みをしてしまいそうだ。またエンドクレジット後の一瞬出てくるサービスカットはなんとアレが北半球まで来てしまい笑った。